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3.講演内容・講師プロフィール

【講演No.1】柴田 崇徳(しばた たかのり)様 〔国立研究開発法人 産業技術総合研究所 上級主任研究員〕

アザラシ型ロボット「パロ」のエビデンスに基づく海外での医療機器化と医療福祉制度への組込み



 秋葉原会場・リアルタイム配信日時 
 
2024年11月9日(土)12:10~13:10
 


 
 講演概要  
 パロとは、93年から医療福祉分野でのアニマル・セラピーを代替する「ロボット・セラピー」と一般家庭での「ペット代替」とを目的に研究開発されたアザラシ型ロボットで、05年に日本で第8世代のパロを市販化し、09年に欧米の各種規制に準拠したものを市販化した。
 日本の医療福祉制度は海外とは異なり、医療と福祉が分離しているため、パロを主に福祉分野でのロボット・セラピーを目的として「福祉用具」とした。一方、米国で「セラピー」の単語を使うためには、治療効果を謳う「医療機器」にする必要があったため、治療効果と安全性のエビデンスを示し、09年に米国FDA(食品医薬品局)から、「バイオフィードバック医療機器(クラス2)」の承認を受けた。欧州では、高齢者や障碍者向け福祉施設でのパロのニーズが高く、当初は医療機器化を強く求められなかったが、徐々に医療でのニーズも増えたため、20年にEUのMDRに準拠して医療機器化し21年から販売が始まった。
 患者の対象は小児から高齢者まで様々であるが、その後、英国、シンガポール、香港、豪州でもパロを医療機器化した。世界各国の医療福祉制度にパロを組入れるため、医療福祉機関等と連携して、「ランダム化比較試験」等を実施し、それらの「メタ解析」の結果等により、パロの治療効果のエビデンスを蓄積している。
 米国では、認知症、ガン、PTSD、脳損傷、発達障害等の患者が、痛み、不安、抑うつ、興奮(暴力、暴言、徘徊等)、不眠等を診断され、「パロを用いるバイオフィードバック治療」を処方・処置されると、公的・私的医療保険で保険償還され得る。また英国や仏国では、認知症の「ガイドライン」において「非薬物療法」として掲載され、副作用が問題な「薬」の低減を期待されている。さらに北欧や米国や仏国や香港では、高齢者施設等へのパロの導入費用の公的全額助成を受けられる。他にウクライナ避難者の「心の支援」に、UNICEF、UN IOM等にパロが活用されている。



   講演者プロフィール  
1967年 富山県生。

92年 名大院電子機械工学専攻修了・博士(工学)。
93年 通産省工技院機械技術研究所・研究官。
95-98年 マサチューセッツ工科大学人工知能研究所・研究員兼任。
96年 チューリッヒ大学人工知能研究所・客員研究員。
98-01年 機械技術研究所・主任研究官。
01-13年 産業技術総合研究所・主任研究員。
09-10年 内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付参事官(情報通信担当)付、及び社会還元加速プロジェクト(在宅医療・介護担当)兼任。
13年~東工大情報理工学院・特定教授、及びMIT高齢化研究所・客員フェロー。
24年4月~東北大院工学研究科ロボティクス専攻・客員教授。

受賞歴
02年 ギネス世界記録、世界で最もセラピー効果があるロボット・PAROの発明。
03年 (社)日本青年会議所、人間力大賞グランプリ、内閣総理大臣奨励賞。
04年 Junior Chamber International, The Outstanding Young Person of the World。
15年 フランスAP-HP、Patients Trophy(非薬物療法のイノベーション)。
18年 Ryman Foundation、「Ryman Prize」(老年医療・福祉・健康分野で世界最高峰、NZ$250,000)。
22年 第10回ロボット大賞「記念特別賞」、経産省等共催(第1~9回の受賞の内、社会的インパクトと、社会変革に繋がったロボットに授与。パロは2006年第1回に受賞)等、受賞多数


式町講師